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代表理事挨拶
       
 
  有限責任中間法人日本ペインクリニック学会
代表理事
花岡 一雄
 
       
   痛みは、病気の兆候の中でも最も多く、昔から医学・医療の原点でもあります。多くの患者さんは、この痛みを訴えられて病院や診療所を受診されます。誰もが思われますように痛みの部位に異常が生じているからです。たとえば、何らかの原因によってお腹の中に炎症が起きますと、身体の中にあります発痛物質が神経の末端を刺激しますので、お腹が痛くなります。以前は、痛みをとってしまいますと身体の中の異常な部位が見つけにくく、病気の診断がつきにくいという理由で、痛みによって苦しんでいるままで検査を受けられることも多く、患者さんもそのために大変な思いをした時代がありました。
 しかしながら、最近では、エコー、CT,MRIなどの診断機器の発達のおかげで、患者さんが痛いままの状態で検査を受なくてもよくなっております。痛みを感じながらの検査では、患者さんも検査に協力しにくいだけでなく、血圧や脈拍、呼吸などにも大きな影響を及ぼしますし、体力も消耗します。その上に長時間にわたって痛みを感じておりますと、痛みが脳内に記憶されます。基本となる病気が治っても痛みだけが取り残されることも稀ではありません。
 米国では、2001年から2010年までを「痛みの10年」として、痛みの研究や治療に対する社会の対応レベルの低さ、経済的な損失を改善するために、患者さんの痛みの評価を診療の義務としているほどです。痛みのための米国における経済的損失はじつに年間8兆円ともいわれております。
 近年、わが国におきましても、高齢化社会を反映いたしまして、帯状疱疹後神経痛や脊椎術後疼痛症候群などのいわゆる難治性慢性疼痛をお持ちの患者さんの数が著しく増加してきております。このような痛みは、病状は似ておりますが、痛みの性質や程度は患者さんによって実にまちまちであります。特に、帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治癒した後に生じる疼痛疾患でありますので、周囲の人々の痛みに対する理解が非常に得られにくいのです。そのために患者さんは精神的にも苦しむことになります。したがいまして、帯状疱疹に罹ったときから、神経ブロック、薬物治療、レーザー治療などの疼痛緩和治療を受けてとにかく痛みをできるだけ感じないようにすることが大切です。この帯状疱疹後神経痛の痛みはアロディ二アと呼ばれておりまして、衣服でこすれても、風が吹きましても、痛みとして感じてしまうという恐ろしい痛みの状態でありまして、初期の疼痛緩和治療を怠りますと、一生痛みが続き、とくにお年寄りの方々をずいぶんと苦しめております。脊椎術後疼痛症候群の患者さんは腰痛で腰椎の手術が行われ、その後に手術前よりも痛みが強くなるような症候群をさしております。これも、相当な難治性でして、同様に患者さんを苦しめております。
 痛みは、患者さんご本人しかわからないし、出来るだけ早く痛みの治療を開始することが大切であります。日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医はそのような痛みに苦しんでおられる患者さんが出来るだけ早く「痛みから解放」されますように、お手伝いさせていただく痛み治療の専門医です。