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痛みの評価法
 患者さんが抱えている痛みを的確に評価することは、その原因を把握しかつ治療効果を判定する上で不可欠と言えます。ペインクリニックでは一般的な問診、神経学的検査、血液検査、画像診断に加えて以下のような評価法を用いて診療にあたっています。
1. 痛みの強さの評価法
 痛みは本質的には患者さん個人の主観的な感覚ですから、先入観や心理的な要因が複雑に関与します。従ってこれを客観的に評価するには多くの困難を伴い、現時点では適切な評価法が存在するとは言えない状況にあります。以下に一般的に用いられている方法を挙げます。
1) Visual Analogue Scale
 最も広く用いられている評価法で、頭文字をとってVASと呼んでいます。長さ10cmの黒い線(左端が「痛みなし」、右端が「想像できる最高の痛み」)を患者さんに見せて、現在の痛みがどの程度かを指し示してもらいます(図1)。ここでの問題点は患者さんによって、これまでに経験したことがある痛みの程度が異なることから「想像できる最高の痛み」の決定があいまいとなってしまうことです。
 このVASと似た方法としては、Numerical Rating Scale(0〜10までの11段階でどの程度かを口頭ないしは目盛りの入った線上に記入してもらう)、Verbal Rating Scale(0:痛くない、1:少し痛む、2:かなり痛む、3:耐えられない程痛む、の4段階で答えてもらう)などがあります。また、痛みによって日常生活動作(Activity of Daily Life)がどの程度制限を受けているのかについて判定する場合には、疼痛行動評価表を用います(図2)。
2) Face Scale(図3
 患者さんの表情によって痛みの強さを判定する方法です(図3)。
3) 機器を用いる評価法
 最近では、より客観的な評価を行おうとする試みのひとつとして知覚・痛覚分析装置Pain Visonと呼ばれる機器が用いられるようになっています。この機器では、人工的に作成した痛みを伴わない弱い電流刺激に対する反応から算出し、痛みの程度を数値として判定することができます。
2. その他の評価法
1) ドラッグチャレンジテスト
 痛みの発生機序を推定する目的で用います。鎮痛機序が判明している薬物(チアミラ−ル、フェントラミン、リドカイン、ケタミン、モルヒネ)を静脈内に投与し、痛みの程度がどう変化するかを確認します。例えば、チアミラ−ルによって痛みが軽減する場合には、中枢性ないしは心因性の機序の存在が疑われます。
2) 心理検査
 心理的な要因が痛みにどの程度関与しているかを把握することも重要です。これには矢田部・ギルフォ−ド性格検査、Cornel Medical Index(神経症やうつ状態の有無を評価)、Self-Rating Depression Scale(SDS、うつ状態を評価)State Trait Anxiety Inventory(STAI、不安の程度を評価)などがあります。
 以上、単一の評価法により痛みを判定することは不可能ですが、いくつか組合わせることでより客観的な評価に近づけることができると思われます。
図表の出典
長櫓 巧:ペインクリニックと東洋医学(真興交易医書出版部)
図1
図2
図3